こんにちは、ママ税理士のゆかりです🌸(ゆめつばさ会計)。
先日、半年ぶりに美容院に行ってきました。担当の美容師さんとおしゃべりをしていたら、「実はうちも回数券(チケット制)を始めたんです」という話に。1回ずつ予約するお客様に比べて、まとめて回数券を買ってくださる常連さんが増えて、経営が安定してきたとのことでした。
美容院や整体、エステなど、チケット制を導入しているお店は本当に多いですよね。お客様にとっては割安で通いやすく、お店にとっても先にまとまった売上(現金)が入ってくるので、資金繰りの面でもありがたい仕組みです。
でも、話を聞きながら税理士としてふと気になったことがありました。「使われなかった回数券」って、会計上どう扱っているんだろう?というところです。今日は、この地味だけど意外と大事な論点を掘り下げてみます。
チケット代は「前受金」──ここまでは多くの方がご存知
チケットを販売した時点では、まだサービスを提供していません。ですので、売上としては計上せず、いったん「前受金」という負債(預り金のようなもの)として処理します。お客様が来店してチケットを1回使うたびに、その分を前受金から売上に振り替えていく、という流れです。
ここまでは、クラウド会計を使っている方であればなじみのある処理だと思います。
本当の論点は「使われなかったチケット」
問題はここからです。有効期限が過ぎても使われないまま残ってしまったチケット、いつまでも「前受金」として帳簿に残しておいていいのでしょうか。
原則的な考え方でいえば、答えは「NO」です。有効期限が到来した時点(有効期限を定めていない場合は、権利が消滅する時効のタイミング)で、その未消化分は「雑収入」に振り替えるのが筋です。お店側は代金だけ受け取って、サービスは提供していない=その時点で実質的な利益が確定した、と考えるためです。
でも実務では「一人一人の管理」がそもそも無理
理屈はシンプルですが、実際にお店を運営していると「お客様一人一人の回数券について、購入日・有効期限・残り回数をすべて追いかけて、期限が来たら都度振り替える」なんて、現実的にはとても手が回りません。日々の施術やお客様対応で手一杯の中、そこまで細かい消込作業をするのは負担が大きすぎますし、システムを入れていない小規模なお店ほどこの壁にぶつかります。
簡便的に処理する方法、実はあります
そこで実務では、次のような簡便的な処理を使うことがあります。
① 発行ロットでまとめて処理する
お客様一人一人ではなく、「〇年〇月発行分」というグループ単位で管理する方法です。有効期限が到来した月に、その月に発行したチケットの残高をまとめて雑収入に振り替えます。個人単位の消込が不要になるので、POSレジやチケット管理システムに「発行月」のデータさえ残っていれば実行できます。
② 過去の実績から「消化されない率」を出して見積り計上する
「発行から2年経つと、だいたい5%くらいは使われずに残る」といった過去のデータがあれば、その割合を使って毎期末に機械的に雑収入計上するルールを作る方法です。
たとえば、期末時点の前受金残高が200万円で、過去の実績から「発行後2年経過分のうち5%は消化されない」ということが分かっているとします。この場合、200万円×5%=10万円を、その期の雑収入として計上する、という形です。
これは実は、上場企業などに適用される新しい収益認識のルール(収益認識に関する会計基準)にある「非行使部分(お客様が権利を使わないと見込まれる部分。ブレイケージとも呼ばれます)」の考え方に近いものです。中小企業には強制適用ではありませんが、考え方自体は参考にできますし、税務署に説明する際にも「合理的な見積りに基づいている」と言いやすいのが利点です。
③ 金額が小さければ、一定年数超で一括処理する
規模の小さいお店であれば、そもそも②のような統計を取るほどのデータもないことが多いはずです。その場合は「発行から3年を超えて残っている前受金は、期末に一括で雑収入にする」といったシンプルなルールを決めてしまうのも一つの方法です。金額的な重要性が低ければ、このくらい割り切ってしまって差し支えありません。
どの方法を選ぶにしても、いちばん大事なこと
正直、どの方法にも一長一短があります。①は手間は少ないですが実態とのズレが出やすく、②は実態に近いですが実績データの蓄積が必要、③は簡単ですが精緻さに欠けます。
ただ、どれを選ぶにしても共通して大事なのは、「一度決めたルールを毎期継続して使うこと」「そのルールを社内規程などの形で記録に残しておくこと」です。その期の利益の出方によって処理を変えてしまう(利益が出ている期は振り替えない、赤字の期だけ振り替える、など)と、恣意的な利益調整とみなされ、税務調査で指摘を受けるリスクがあります。
まとめ
- チケット制ビジネスでは、販売時点のチケット代は「前受金」として処理し、使用のたびに売上へ振り替える
- 問題は「使われなかったチケット」。原則は有効期限到来時に雑収入へ振替
- 実務では一人一人の管理が難しいため、①発行ロット一括処理 ②消化率による見積り計上 ③重要性の原則による一括処理 といった簡便法がある
- どの方法でも「ルールを決めて毎期継続すること」が税務上のポイント
チケット制は経営面でとても便利な仕組みです。導入する際は、割引率や有効期限だけでなく「使われなかった分をどう扱うか」まで、事前にルールを決めておくことをおすすめします。
チケット制はほんの一例です。経営努力の一環で「これをやってみたい」というアイデアは、日々たくさん出てくるものだと思います。そのアイデアを、税務上どう処理すればいいか一緒に考えるブレーン役になるのも、私たち税理士の仕事です。
記事の内容は、あくまで一般的なケースです。「うちの場合はどのルールが合う?」という疑問こそ、事業の規模や実情によって答えが変わります。小さなことでも、お気軽にお問い合わせください。

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