こんにちは、ママ税理士のゆかりです🌸(ゆめつばさ会計)。
以前のブログ記事「食料品の消費税が1%に?テイクアウトと店内で90円差」で「食料品の消費税が1%になったら、テイクアウトと店内で90円差」という”買う側”の話をご紹介しました。今回は、その裏側にある”売る側”の実務、つまり事業をしている方に関わる話をお届けします。
※2027年4月からの飲食料品消費税1%への引き下げは、2026年8月、政府が実施の方針を固め、秋の臨時国会に法案を提出する運びとなりました(この記事を書いている時点ではまだ法案の可決前です)。
実現に向けて一気に現実味を帯びてきたぶん、農業や飲食店を営む方は、今のうちに”自分の業種にとって得なのか損なのか”を知っておく価値があります。
意外と知られていない「簡易課税」という分かれ道
消費税の申告方法には、大きく分けて2つあります。
- 原則課税:実際に売上で預かった消費税から、実際に仕入・経費で支払った消費税を差し引いて計算する
- 簡易課税:実際の仕入額を集計せず、業種ごとに決められた「みなし仕入率」を売上の消費税額に掛けて計算する(前々年の課税売上高5,000万円以下の事業者が選択できる)
ふだんはこの2つ、どちらを選んでも大きな差にならないことも多いのですが、食料品が1%になると、この2つの間に無視できない差が生まれます。ここが今回いちばんお伝えしたいポイントです。
農業を営む方へ:原則課税なら「還付」が狙えます
農業(食用の農林水産物の生産・出荷)は、簡易課税では「第二種事業」に区分され、みなし仕入率は80%です。
- 簡易課税のまま:売上の消費税(1%)×80%を差し引いて計算 → 納税額はわずかでも残る
- 原則課税:肥料・農薬・機械・燃料など、実際に支払った消費税(多くは10%)をそのまま差し引ける → 預かった消費税(1%)より支払った消費税(10%)の方が多く、還付になる可能性が高い
たとえば、売上1,000万円(食料品のみ)・経費のうち課税仕入が800万円という農家の場合(みなし仕入率と同じ80%で仮計算)。
- 売上で預かる消費税:1,000万円 × 1% = 10万円
- 経費で支払う消費税:800万円 × 10% = 80万円
- 原則課税なら → 差額70万円が還付
- 簡易課税のままなら → 10万円 × 80% = 8万円を差し引いた2万円は納税(還付にはならない)
同じ売上・同じ経費でも、課税方式ひとつで「70万円の還付」と「2万円の納税」ほどの差が出ることになります。簡易課税を選んでいる農業者の方は、原則課税への切り替えを検討する価値がある、というのはこういう理屈です。
飲食店を営む方へ:店内飲食が多いと「増税」になるかもしれません
飲食店業は簡易課税では原則「第四種事業」(みなし仕入率60%)です。ただし、テイクアウト・宅配分の売上を店内飲食と区分して経理していれば、その持ち帰り分は「製造小売業」として第三種事業(みなし仕入率70%)に区分できます(区分経理していない場合は、全体に最も低い第四種=60%が適用されます)。ここで効いてくるのが「外食は1%の対象外」というルールです。
- 店内飲食(外食)の売上 → 10%のまま
- テイクアウト・宅配の売上 → 1%に
- 食材の仕入れ → 多くが飲食料品なので1%
原則課税で申告している飲食店の場合、店内飲食の割合が高いほど、預かる消費税(10%)に対して差し引ける仕入の消費税(1%)が小さくなり、今より納税額が増える可能性があります。今は「外食10%・仕入8%」で差が2%ですが、これからは「外食10%・仕入1%」で差が9%に広がるためです。
一方、簡易課税を選んでいれば、実際の仕入税率がいくつであっても納税額の計算方法(店内飲食は60%、区分経理したテイクアウトは70%)は変わらないので、この”逆転現象”の影響を受けません。テイクアウト比率が高い店舗ほど、売上を区分経理しておくメリットが大きくなります。
つまり飲食店にとっては、店内飲食の比率が高い店ほど「簡易課税の方が有利」になる可能性がある、農業とは逆の力学が働くわけです。
税理士の視点:そもそも「2年限定」と相性が悪い制度です
ここからは少し本音の話です。
今回の1%減税は、2027年4月から2029年3月までの2年間限定の措置とされています。ところが、簡易課税には「一度選択すると、原則2年間は取りやめられない」というルールがあります。逆に、簡易課税をやめて原則課税に変える場合も、変更したい課税期間が始まる前日までに届出が必要で、思い立ってすぐに切り替えられるものではありません。
つまり──
- 農業の方が「還付を狙って原則課税に切り替えよう」と思っても、2年縛りのタイミングが合わなければ、減税期間が終わる頃にようやく切り替えが完了してしまう
- 逆に、減税期間が終わって8%に戻るタイミングで元の課税方式に戻したくても、届出のタイミング次第では間に合わない
制度が「2年限定」であるのに、事業者側の課税方式の選択には数か月〜1年単位のタイムラグがある。この噛み合わなさは、正直なところ制度設計として無理があると感じています。減税の恩恵を受けるはずが、届出のタイミングを誤ったばかりに損をする事業者が出てもおかしくありません。
今のうちに確認しておきたいこと
- 自分(自社)が今、原則課税・簡易課税のどちらを選んでいるか
- 農業・食品製造業など「売上に占める食料品の割合が高い」業種の方 → 原則課税への切り替えで還付が狙えるか試算する
- 飲食店・カフェなど「店内飲食の比率が高い」業種の方 → 簡易課税のままの方が有利にならないか試算する
- 課税方式を変更する場合、届出書の提出期限(変更したい課税期間が始まる前日まで)を逆算してスケジュールを組む
いずれも、実際の売上・経費の内訳を見ないと有利不利は判断できません。「うちの場合はどうなる?」という試算こそ、業種や事業規模によって答えが変わるところです。
まとめ
- 食料品消費税1%(2027年4月〜2029年3月・法案は秋の臨時国会へ)は、原則課税か簡易課税かで受ける影響が業種ごとに正反対になります
- 農業:原則課税なら還付が狙える可能性大。簡易課税のままだと恩恵は限定的
- 飲食店:店内飲食が多いと原則課税では増税に。簡易課税(店内60%・区分経理したテイクアウトは70%)の方が有利な場合も
- 簡易課税には「2年縛り」があり、2年限定の減税とタイミングが噛み合いにくい制度設計上の課題がある
- 該当する業種の方は、届出期限から逆算した早めの試算・検討がおすすめです
正式に法案が決まったら、このブログでも続報を解説しますね。
記事の内容は、あくまで一般的なケースです。「自分の場合はどうなる?」という疑問こそ、事業者一人ひとりで答えが変わります。小さなことでも、お気軽にお問い合わせください。


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