こんにちは、ママ税理士のゆかりです🌸(ゆめつばさ会計)。
以前のブログ記事「食料品消費税1%、あなたの業種は『得』か『損』か?」で、農業や飲食店にとっての”売る側”の実務の話をご紹介しました。あのとき「税理士の本音」として一番強くお伝えしたのが、簡易課税の”2年縛り”と2年限定の減税が噛み合わない、という制度設計の心配でした。
その後、税制改正の議論がさらに一歩進み、事業者向けの特例の中身がだいぶ具体的に見えてきました。今回はその続報です。
※これは与党の税制改正大綱として、まだ正式決定していない「案」の段階の情報です。今後の大綱決定・法案審議で内容が変わる可能性はありますので、その前提でお読みください。
まず結論:”2年縛り問題”は、少なくとも始まりの時点では解消されそうです
前回、簡易課税を選んでいる方が「2年限定の減税に合わせて課税方式を切り替えたくても、2年縛りのせいでタイミングが合わない」という問題を指摘しました。
今回の案では、この心配に対応する特例が用意されています。制度が始まる令和9年4月1日の属する課税期間に限り、簡易課税をやめる場合の「2年間は継続しないといけない」というルールを適用しない、という内容です。つまり、減税が始まるタイミングで簡易課税から原則課税に切り替えたい場合は、通常より柔軟に対応できるようになりそうです。
ただし気をつけたいのは、この特例は「始まるとき」に限定されているように見える点です。2年後の令和11年4月、税率が8%に戻るタイミングで課税方式を元に戻したい場合の2年縛りについては、今回確認できた情報には明記がありませんでした。「入り口はスムーズになりそうだが、出口はまだ分からない」というのが、現時点での正直な状況です。
新たな疑問:”飲食料品を少しでも売っていれば”対象になる?
今回の情報を読んでいて、もうひとつ気になる点が出てきました。この2年縛り解除の特例は「飲食料品を譲渡する事業者」が対象とされています。では、農業や飲食店とは全く関係のない業種の方が、たまたま簡易課税を選んでいて、その事業のごく一部で飲食料品を売った場合はどうなるのでしょうか。
たとえば、雑貨店がついでにお菓子も少し置いている、というようなケースです。考えられるパターンは大きく2つありそうです。
- 売上のほんの一部でも食料品があれば、事業全体としてこの2年縛り解除の対象になる
- あくまで食料品を売った部分に関する話にとどまり、事業全体の簡易課税の継続要件には影響しない
どちらになるのかによって、「うちは関係ない」と思っていた業種の方にも影響が出るかどうかが変わってきます。ここは今回確認できた情報だけでは判断がつかないため、続報が出るのを待ちたいと思います。
もっと大きな変化:簡易課税でも「実質負担ゼロ」になるかもしれません
前回の試算のいちばんの前提だったのが、簡易課税の「みなし仕入率」(農業80%・飲食店の店内60%/区分経理したテイクアウト70%)でした。この前提を覆しかねない特例も案に含まれています。
案の内容を要約すると、簡易課税を選んでいる事業者が食料品を売った場合、その部分については業種ごとのみなし仕入率を使わず、「売上でもらった消費税と同じ額を、そのまま仕入で払った消費税とみなしてよい」というものです。つまり、食料品の売上にかかる消費税は、簡易課税のままでも実質的に納税額がゼロになる可能性があります。
これを踏まえて、前回の試算をアップデートしてみます。
農業を営む方へ:簡易課税でも「納税ゼロ」に近づくかもしれません
前回、売上1,000万円(食料品のみ)・課税仕入800万円の農家さんの例で、こう試算しました。
- 原則課税なら → 差額70万円が還付
- 簡易課税のままなら → 2万円は納税(還付にはならない)
今回の特例が適用されると、簡易課税の欄が変わります。
- 簡易課税(新特例後):売上でもらう消費税10万円=仕入控除税額10万円 → 納税額0円
「2万円の納税」が「0円」になる、というのは事業者にとって嬉しい話です。ただし、ここで注意したいのは、簡易課税では「還付」までは出ない、という点です。あくまで納税額がゼロに近づくだけで、原則課税なら受けられる70万円の還付は、簡易課税のままでは受けられません。「大きく損はしないが、還付という得も取りに行けない」というのが簡易課税、「手間はかかるが還付を積極的に狙える」というのが原則課税、という住み分けに変わりそうです。
飲食店を営む方へ:損得の”仕組み”自体は変わらなそうです
飲食店については、前回「店内飲食の比率が高い店ほど簡易課税が有利」という結論をお伝えしました。この結論の”向き”自体は、今回の情報を見ても変わらなそうです。
理由は、外食(店内飲食)は今回の1%特例の対象外で10%のままだからです。原則課税の場合、店内飲食で預かる消費税(10%)に対して、食材仕入で差し引ける消費税が1%まで下がることに変わりはなく、店内飲食比率が高い原則課税の飲食店ほど納税額が増える、という前回の構造はそのまま残ります。
一方、テイクアウト・宅配部分(1%対象)については、簡易課税を選んでいれば新特例により実質負担ゼロに近づく可能性があります。前回は「区分経理すれば70%、しなければ60%」という差がありましたが、この特例が適用されるかどうかで、区分経理する意味合いが変わってくるかもしれません。ここは今回確認できた情報だけでは細部(区分経理の要否など)まで断定できないため、続報が出たら改めて整理します。
今のうちに確認しておきたいこと(アップデート版)
- 自分(自社)が今、原則課税・簡易課税のどちらを選んでいるかを、まず確認する
- 農業など食料品の売上比率が高い方 → 「還付を積極的に狙うなら原則課税」「手間をかけず大きな負担増を避けたいなら簡易課税でも大丈夫そう」という2つの選択肢で考える
- 飲食店・カフェなど店内飲食の比率が高い方 → 簡易課税が有利という前回の結論は今のところ変わらなそうですが、テイクアウト部分の扱いは続報待ち
- 飲食料品をメインで扱わない業種で、たまたま簡易課税を選んでいて売上の一部に食料品がある方 → 2年縛り解除の対象になるかどうかはまだ分からないので、続報待ち
- いずれにしても、まだ「案」の段階なので、実際に届出書を出すなどのアクションは正式決定を待ってからにしましょう
まとめ
- 食料品消費税1%(令和9年4月〜令和11年3月・まだ与党税制改正大綱として未決定の「案」段階)について、事業者向け特例の中身が具体的に見えてきました
- 簡易課税の”2年縛り”問題は、少なくとも制度が始まるタイミングについては解消される見込み(終了時点や、飲食料品をメインで扱わない業種にどこまで適用されるかは続報待ち)
- 簡易課税でも食料品売上部分の実質負担がゼロに近づく特例が案に含まれており、農業の損得試算が変わりそうです。ただし還付までは出ない点に注意
- 飲食店については、店内飲食比率が高いほど簡易課税が有利という前回の結論の”向き”は変わらなそうです
正式に大綱が決定し、法案が成立したら、このブログでも確定情報をお伝えしますね。
記事の内容は、あくまで一般的なケースです。「自分の場合はどうなる?」という疑問こそ、事業者一人ひとりで答えが変わります。小さなことでも、お気軽にお問い合わせください。


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