こんにちは、ママ税理士のゆかりです🌸(ゆめつばさ会計)。
「AIが税理士の仕事を奪う」と言われるようになって、ずいぶん経ちました。
正直に言うと、私自身も毎日AIを使っています。調べものをさせれば速くて的確ですし、「こんなことまで整理してくれるの?」と驚くことも少なくありません。リサーチ力に関しては、本当に優秀です。
それでも私は、税理士の仕事がそのままAIに置き換わるとは考えていません。理由をひとことで言うと、誰かにとっての「部分最適」が、その人にとっての「全体最適」とは限らないからです。
「部分最適」と「全体最適」って?
部分最適とは、ある一つの場面だけを見たときに、いちばん良い答えのこと。全体最適とは、いろいろな要素をまとめて見たときに、トータルでいちばん良い答えのことです。
AIは、聞かれたことに対して、とても質の高い答えを返してくれます。つまり「部分最適」を出すのが得意です。
一方、税理士の仕事は、その答えが全体で見たときにもベストなのかを考えることです。ある事象を、その側面だけで答えることはしません。ここが大きな違いです。
例① ご家族の状況によって、答えが変わる
たとえば「今年の税金を少しでも下げたい」という相談があったとします。
AIに聞けば、使える控除や制度を整理して教えてくれるでしょう。その答え自体は、きっと間違っていません。
でも実際には、ご家族の状況によって「何が得か」は変わります。配偶者やお子さんの収入、扶養に入っているかどうか、社会保険の加入状況、将来の相続や贈与の予定。ご本人の税金が下がっても、家族全体で見ると負担が増えてしまう、ということが起こりえます。
「家族の情報」は、聞かれなければ話さない方も多く、AIに伝えなければAIは知りようがありません。
例② 利益とキャッシュは、別のもの
もう一つの例は、利益とお金(キャッシュ)の関係です。
税金を減らしたいなら、利益を小さくする方法があります。でも、利益を小さくしすぎると、金融機関から融資を受けるときの評価に響くことがあります。また、帳簿の上では利益が出ているのに、手元のお金は足りない、という状況もあります。
「税金を下げる」という問いに、AIは「税金を下げる方法」を答えてくれます。でも、その結果として、お金の流れや融資のしやすさがどうなるかまで、自分から踏み込んで教えてくれるとは限りません。
例③ 税金は、ほかの税金や制度とつながっている
税金は、一つひとつが独立しているわけではありません。所得税を下げる工夫が、住民税や事業税、消費税、社会保険料にも影響することがあります。
ある税金だけを見れば最適な方法でも、ほかの税金や制度まで含めて見ると、そうとは言えない場合があります。税法どうしの絡みをふまえて、全体のバランスを見る必要があるのです。
素人がAIを使って、同じ判断ができるか
ここまで読んで、「それならAIに、全部まとめて質問すればいいのでは?」と思った方もいるかもしれません。
ところが、ここに難しさがあります。AIは聞かれたことにしか答えないからです。
全体を見て判断するには、「何を聞くべきか」を最初から知っている必要があります。家族のことも、お金の流れも、ほかの税金との関係も、問いの中に入れて初めて、AIは考慮してくれます。
でも、「何を聞くべきか」がわからないのが、素人の方にとって一番むずかしいところだと思います。聞かなかった論点には気づけない。そして、気づけなかったこと自体にも気づけない。これが、部分最適で終わってしまう一番の落とし穴です。
もちろん、これはAIが悪いという話ではありません。聞かれたことに精一杯答える、それがAIの得意なことです。
税理士の仕事は「答えを出すこと」だけではありません
私が税理士の価値だと思っているのは、答えを出すこと以上に、「どこまで見るか」「何を優先するか」を、その方に合わせて総合的に判断することです。
お話を伺う中で、「ご家族のことも教えてください」「資金繰りはどんな状況ですか」「将来はどうしたいですか」と、こちらから質問します。聞かれていないことまで想像して、質問を広げる。それが、全体最適に近づくための第一歩だと考えています。
節税のためだけに事業をしている方はいません。社長の夢や、ご家族の暮らしがあって、その上に税金の話があります。ゆめつばさ会計が「社長の夢を叶えるサポート」を掲げているのは、そのためです。
税理士が「おしゃべり」なのには、理由があります
多角的な角度から物事を判断するために、税理士はコミュニケーションをとても大事にしています。
面談の中で、「こんなこと聞いて、意味あるのかな?」と思うような質問をされた経験はありませんか?ご家族のこと、休日の過ごし方、今後やってみたいこと……。実はそうした何気ないお話も、税理士にとっては大切な判断材料になっている可能性があります。
雑談のように見えるやりとりの中に、全体最適のヒントが隠れていることは、本当によくあるのです。
だから、お話し好きの税理士は、あなたの全体像を知ろうとして、寄り添ってくれている証拠かもしれません。「こんなことまで話していいのかな?」と遠慮せず、気軽にお話ししてみてくださいね。
まとめ
AIは、敵ではなく、とても心強い道具です。調べものや下調べには、ぜひ活用していただきたいと思います。
ただ、「自分の場合は、全体で見てどうなのか」を判断するときには、ぜひ専門家の目も使ってください。AIで調べたことをお持ちいただくのも大歓迎です。そこから、聞かれていなかった論点を一緒に見つけていくこともできます。
AIの得意なことと、人間の税理士の得意なことを、うまく組み合わせていきましょう。
記事の内容は、あくまで一般的なケースです。「自分の場合はどうなる?」という疑問こそ、経営者一人ひとりで答えが変わります。小さなことでも、お気軽にお問い合わせください。

コメント